実は8/13(金)に頚椎椎間板ヘルニアを発症し、今自宅療養中です。
脊椎外科医が椎間板ヘルニアになる事も珍しいので、報告してみます。
主訴(患者さんの訴え)
頚部痛、左上肢痛
現病歴(受診するまでの経過)
8/13(金)の昼に首というよりは、左の肩甲骨の奥に痛み(違和感)を感じた。
誘引は全くありませんでした。
(あえて言うなら、8/13は1日側わん症のレントゲン計測をしてたくらいでしょうか)
その日は、「首を寝違えたかな?」という程度でした。
8/14(土)痛みが楽になるどころか、左側に全く向けなくなりました。
さすがにおかしいと感じ、この日は1日家で寝てました。
8/14(土)の夜が痛みのピークでした。
この日は、「座ってても、寝てても痛い。寝返りも痛くてできない。」
このあたりから、左の肘辺りまでしびれがでてました。
脱力はありませんでした。
8/15(日)この日も、痛みは変わらず。
8/16(月)この状態じゃあ仕事にならんなあと思いながらも、外来があるので、病院に行きました。診療中も、横になったり、痛み止めを飲んだりしながらなんとか1日が終わりました。
院内の疼痛科(ペインクリニック)に行って、痛み止めを処方してもらいました。
8/17(火)このあたりから症状は少しずつ改善。横になってじっとしているとあまり痛みを感じなくなりました。でも、あいかわらず首は回らず、痛み止めが切れると、首と肩甲骨、左腕がだるくなるといった感じ。
この時点で、診療に支障がでてしまい、8/18(水)から自宅安静になりました。
おかげさまで、現在は痛みはほぼ消えてます。少し首が回りにくいですが、来週からは復帰できそうです。
ここから先は、普段患者さんを診察していた時と、今回の症状を比較してみました。
1)発症の仕方
違和感→しばらくして症状がピークになる。というのは、診察していて良くみかける症状です。
2)痛みの場所
頚椎のヘルニアで首が痛い、回らない。というのは、一般的ですね。
他にも、肩甲骨内側に痛みがでるというのが、実感できました(今回はむしろここが痛かった)。
3)横になると楽になるか?
楽になります。でも、急性期は、座ってても、寝てても痛かったです。
4)痛み止めは効くのか?
ロキソニン、ボルタレン座薬は、急性期の痛みにはあまり効きませんでした。
疼痛科で出してもらった、リン酸コデインは、良く効きました。
今まで、自分の外来で、リン酸コデインを出す機会は非常に少なかったのですが、今後は積極的に出すかも。海外のガイドラインでも、ヘルニアの痛みには、麻薬を出すという話を聞いたことがあります。
5)Spurlingテストは陽性か?
今回一番強調したい話題です。Spurlingテストは、頚椎の向きを変えて、上肢痛を誘発するテストとして、首の診察時にほぼ行う検査です。
でも、頚椎椎間板ヘルニアの急性期は、常に神経根が刺激されている状態です(常に陽性なわけです)。
とても首の向きを変えることなどできません。しかも、これを痛みがない他者(医者)が行ったら。。痛すぎる。
てか、禁忌に近いと思いました。
なので、私的に今後は、典型的な首の痛み、上肢の放散痛のある人にSpurlingテストはしません。
昔あるセミナーに参加したとき、経験豊富な脊椎専門の先生が、「私はSpurlingテストは、しません」とおっしゃられていました。その理由がやはり、このテスト自体が、痛みを悪化させる可能性があるからだとおっしゃられていました。
下肢のSLRテストと同様、痛みを誘発するテストは、「痛みを感じそうになったら、検査をやめますので、すぐに言って下さい」と言って、検査もゆーっくり行うのが良いと思いました。
患者さんは、痛みのでるポジションは身をもって知っているので、もうすぐ痛くなるところでストップと言います。
研修医の先生に指導する時も、「疼痛誘発テストは外来で1回だけ。回診の度にしてはだめ。」と教えてます。
最後に、今回、外来、病棟業務、手術など、多岐にわたり、関係者にご迷惑をおかけいたしました。
また、元気に復帰するのが、最大の恩返しになると信じて、今は療養に専念いたします。