2018年1月3日水曜日

日米外科医の待遇の違いについて

橘玲さんは,仕事には3種類あり
・バックオフィス(マックジョブ)
・スペシャリスト
・クリエーター
をいう分け方をしています.

医師の仕事は,「スペシャリスト」の代表と考えられています.

アメリカに留学経験のある先生はご存知だと思いますが,アメリカの一流病院で外科医(整形外科医含めて)の年収を聞くと,日本との違いに驚愕(きょうがく)すると思います.日本とアメリカでは,一桁違うことも珍しくありません.(もちろんアメリカの医師が日本の10倍以上の年収を得ています).笑えない冗談として,日本で有名な心臓血管外科医が,自分の年収をアメリカ人に話したところ,「それは,1週間の給料か?!」と真顔で言われたとか.

その事実を,私は以前から知っていましたが,その理由を一言で説明するこができませんでした.でも,本書では,その理由が一言で述べられていました.
欧米ではスペシャリストは「会社の看板を借りた自営業者」で,日本では「会社に所属するサラリーマン」なのです.
アメリカの場合
・患者さんが増える
・新しい検査や治療がおこなえるようになる
といった場合,医師は口をそろえて,「新しく人を雇えばいい」といいます.
自分の診療を効率よく行うためには,自分の得た収入を使って,優秀な人を雇い,さらに効率化をはかります.たくさん患者さんをみるドクターには,たくさんのサポートスタッフがつきます.アメリカでは,臨床所見をとるスタッフ,入院予約をするスタッフ,閉創するスタッフがいます.これは,アメリカの医師が「自営業者」と考えると理解が容易になります.手術を円滑に行うために,分業するのがあたりまえで,生産性が一番高くなる方法を採用しています.

一方で,日本の場合,
・患者さんが増える
・新しい検査や治療がおこなえるようになる
といった場合にも,医師は自分の裁量で人を雇うことができません.ということで,仕事を頑張れば頑張るほど,労働時間が長くなり,体力的にもきつくなります.

以前,「医師の残業に上限は必要か?」という議論に対して,一部の有識者から,「医師の仕事は,スペシャリストなわけだから,上限は不要では?」という意見がありました.

これに対する答えも,日米の違いを考えれば,回答は自ずと導かれます.
アメリカ:スペシャリスト=自営業者 仕事が増えたら,自分の裁量でスタッフを増やせる.労働時間の上限はなくてもよいかもしれない.

日本:勤務医はスペシャリストではあるがサラリーマン.自分の裁量でスタッフを増やすこともできないので,残業の上限は必要.
となりそうです.