2010年10月11日月曜日

ミラノ留学:キャリアについて考えてみる

今日は,ちょっとまじめな話題になります.
整形外科に関して,今後のキャリアについて考えてみたいと思います.
1)開業するか勤務医を続けるか?
これについては,開業するなら若いうちが良いと思っています.
今のところ,開業する考えはないので,勤務医を続ける道を選んでいます.

2)勤務医ならどこで働くか?
多くは市中病院で働く事になります(公的病院かprivate clinicかの選択がありますが).
大学病院のスタッフとして働くというのは,むしろ特殊な選択になると思われます.
私は,大学病院の助教なので,ちょっと特殊な道に進んでいると思われます.
それを望んでいるので,順調なキャリアと言えます.

3)大学病院で働き続けるなら,教授になるか?
基本的に,大学病院で退職できるのは,教授だけです.
なので,教授になるか?そうでないかは,大きな選択になりますね.
教授にならないのであれば,いつかは,市中病院に勤務する事になります.

教授になるかどうかは,さておき,大学病院でのキャリアについて考えてみたいと思います.
日本にいると実感がありませんが,もし,アメリカのドクターに,
「自分は,大学病院で脊椎の手術をしており,PhD(医学博士)です」と自己紹介したら,
「Oh, Great!」となります.
先日のブログにも書きましたが,海外では,特定のポジションを得るためには,すさまじい競争がありますし,運も必要です.

では,大学病院で仕事をする事は,みんなに勧められるか?と言われると,言葉につまります.
といいますのも,大学病院は,「臨床,研究,教育」という3つの仕事があるので,手術だけしていたら良いとは言えません.
臨床の中には,当然,外来,病棟,手術が含まれます.
多くの大学病院スタッフは,この中である一定の業績を求められるので,非常にストレスフルな生活をしています.

1)臨床なら,手術を年間どれくらいしているか?とか.他にも合併症がおこるとその対応に追われるなど.また,大学病院を受診する患者さんは,合併症が多い患者さんも多く,外来は遅くまでかかります.
2)研究については,科学研究費をいくつ取得したか?論文をどれだけ書いたかなど.
これらも,ある一定の業績を出しておかないと,チクチクとプレッシャーを感じます.
3)教育については,学生,研修医などの指導も行います.大学病院というのは,教育に関しては,非常に重要な機関と言えますから,ここも手を抜く訳にはいきません.

個人的には,以前つとめていた神戸赤十字病院にいた時の方が,論文をたくさん書いてたなあ.神戸赤十字病院では,2次救急はもちろん,併設の兵庫県災害医療センターに搬送される3次救急の手術も行っていましたので,目が回る程忙しかったです.
つまり,大学病院は,それ以上に忙しいと言えるかもしれません(個人的な意見ですが).

それについて,良いとか悪いとか議論しても,あんまり意味が無いなあと,最近は思います.
以前,海外のドクターと,「日本の医師は給料が低い」などの話になった時に,海外のドクターが「それがいやなら,海外で働いたらいいじゃないか!」と言われたのが印象に残っています.
つまり,海外で職場を見つけるというのも含めて,無限にある選択肢の中から,今のキャリアを選んでいる訳ですから,日本の良いところも悪いところも含めて,今を受け入れるしかないなあと.

では,なぜ大学病院で働くというキャリアを目指すのか?といいますと.
1)難しい手術にチャレンジできる環境がある
2)今回のように留学するチャンスがある
3)海外の学会に参加する機会が多い
などがあげられます.
特に,留学となると,大学病院に勤務している方が,チャンスは多いと思われます.

留学については,好き嫌いがあるとは思いますが,日本とは全く異なる環境に身を置く事で,普段の仕事を見つめ直す良い機会になると思います.
留学するためには,「自分はこれだけの結果を残した」とアピールできるものが必要になります.
実感としては,専門医取得の数や手術件数といったものより,やはり論文の数が一番重要だと思います.
といいますのも,そもそも,一般的なCV(履歴書)には,論文の欄は,どんとありますが,手術件数などについてはあまり,書く欄がありません(笑).

まあ,みんな苦労して働いていて,今を大切にしながら働くのみ.ということでしょうか?
ちょっとまじめな話になっちゃいましたが,何かの参考になれば幸いです.

2 件のコメント:

  1. すぎ先生、こんにちは!
    今回のキャリアプランのお話、とても参考になりました。
    先生のご専門の脊椎と異なり、私の志す腫瘍は働くことのできる病院がかなり限られています。
    大学病院もしくは、がんセンター+αくらいしかありません。
    ですから、開業の可能性はありませんし、市中病院も厳しいです。
    先生のおっしゃる通り、論文などの業績を残していかないと、なかなかその道に残れない(ポストをゲットできない)状況があります。先生を見習って頑張らないとです。
    先生は、大学病院のメリットを難しい手術へのチャレンジ、留学および海外の学会参加のチャンスと挙げられています。
    私も全くの同感ですが、それに加えて、人的交流の多さ、も挙げられると思います。大学にはそれぞれの分野の専門の先生がいらっしゃいますし、多くの研修医の先生がローテートされています。ですので、専門外の最新の情報も入りやすいですし、また研修医の先生から刺激を受けることも多くあります。そういった人的交流が多くあることも大学病院の大きなメリットだと感じています。私自身は大学に残れるかどうかは全くわかりませんが・・・(*_*;

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  2. まめ先生
    大学病院のメリットとして,人の交流が多い事は,確かに重要ですね!
    外来で,悩むような患者さんが受診されても,医局に帰ると,各分野の専門家がいるというのは,頼もしいです.

    また,モチベーションが高い先生が多く,無意識のうちに,良い影響を受けている事も多いですね.

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