2017年9月2日土曜日

医師は労働者?

m3.comに興味深い記事がありました.

「医師は労働者」、共通認識で議論を - 岡崎淳一・厚労省働き方改革担当参与に聞く

医師に時間外労働の上限規制を適応するかどうか?に関する議論です.

記事より引用
医師を「労働者」と見なすことに、心理的な抵抗感を覚える方もおられます。 「医師は専門職だから、労働者ではない」と言ったところで、労働時間、賃金などの条件について、使用者と労働者は就業時に契約を結び、それを遵守することが必要。これが労働法制のルールであり、「医師は労働者ではない」「労働法制のルールの外側」というのは無理筋の議論。例えば、ノーベル賞受賞学者であっても、大学の教授であれば、労働者。金融機関で何億円もの年収を稼いでいるディーラーでも労働者です。ただし、労働法の全てを一律に適用しているわけではなく、それぞれの業種で例外を認めているわけです。


労働者の定義とは,
労働基準法第9条によれば,「この法律で『労働者』とは,職業の種類を問わず,事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者をいう.」とされています.


現在議論されている,高度プロフェッショナル制度を医師に適応するかどうか?という議論にもつながります.

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
・ 職務の範囲が明確で一定の年収要件(少なくとも1,000万円以上)を満たす労働者が、高度な専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議などを要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。
リンク先:厚生労働省ホームページ

全くの私見ですが,医師の勤務体系は,様々なため,医師を一括り(ひとくくり)として扱うことには,そもそも無理がある気がします.

勤務医or開業医の問題
都心部or僻地の問題
指導医or専門医未取得の若手医師の問題

例えば,公的病院において
・指導医Aは,自分の手術技術・評判の向上を希望しており,昼夜問わず,(労働時間の上限規制無しに)手術をしたいと考えている.
・指導医Aと同じ診療科で働く若手医師Bは,指導医Aの手術には全て参加することを(暗黙の了解として)期待されており,さらに術前,術後の管理も担っている.

この場合,指導医Aに対しては,高度プロフェッショナル制度を適応すればいいじゃないか?という意見もあると思います.一般の人が持つ,医師のイメージに近いかもしれません.

ですが,若手医師Bに対しては,どうでしょうか?研修医の過労死については,以前から問題視されており,上限規制を設けるべきではないでしょうか.若手医師Bに対して,仕事がきついなら辞めればいい.では問題は解決しません.

指導医Aが,私立病院に勤務する医師であり,自分の手術件数が,給与に直接反映される立場であれば,高度プロフェッショナル制度の対象としても良いのかもしれません.

しかし,若手医師Bが公的病院に勤務しているのであれば,成果型労働でもありませんし,自分の意思で勤務時間をコントロールすることは不可能です.指導医Aが手術をした患者さんの状態が悪化した時に,放置することはどう考えても難しいでしょう.

医師の応召義務についても,多くの場合,若手医師Bが対応することになります.病棟看護師が,患者さんの状態悪化を最初に報告するのは,多くの場合,若手医師Bでしょうから.