2017年10月13日金曜日

手術をする際に欠かせない関係とは?

私は,患者さんに手術の説明をする時に
「手術というの(患者さんが)吊橋(つりばし)を渡るようなものです.一人で渡るのは怖いですね.ですから,私も一緒に渡ります.時々怖いこともありますが,一緒に頑張りましょう.」とご説明しています.

この説明には
・手術というのは,時々怖いことが起こる(合併症含めて).

・怖い思いをするのは,患者さんだけでなく,主治医も同じ.
→手術を担当する主治医にもリスクはある.

・でも,一人じゃない.主治医(私)は何度もその吊橋を渡ったことがあるエキスパート.その私が(患者さんと一緒に)吊橋を渡ります.
→(困難はあるけれども)同じ方向を向いて一緒に頑張りましょう.

といった要素を含んでいます.(うまく伝わっているでしょうか?笑)

ここで,患者さんやご家族から少し安心した表情がうかがえると,「よし!」という手応えを感じられます.私が,手術をする際に,どうしても欠くことのできないものが,「患者さんから信頼を得ている」という手応えです.

信用と信頼の違い
 信用とは、何らかの実績や成果物を作成して、その出来栄えに対しての評価のことをいいます。そのため「信用」するためには、実績や成果物が必要不可欠なわけです。この実績や成果物といった、過去の業績に対して「信用」するのです。
一方「信頼」は、そうした過去の実績や業績、あるいはその人の立居振舞を見たうえで、「この人ならこの仕事を任せてもちゃんとしてくれるだろう」とか「この人なら私の秘密を打ち明けても大丈夫だろう」などと、その人の未来の行動を期待する行為や感情のことを指します。もちろん「信頼」するためには何らかの根拠が必要ですが、その根拠を見たうえで、未来を「信頼」するというわけです。

もし,私のことを信用していても,信頼していない人に対して手術を行ったとします.患者さんが期待していた結果が得られず,予期しない合併症が起きた時に,患者さんは私のことを信頼 してくれるでしょうか?

先程の吊橋の例えでいえば,
「とつぜん,吊橋の底が抜けてしまうような,予期しないトラブルが起こった時に,専門家の私の判断を信頼してくれるでしょうか?」

患者さんからの信頼があれば,私は命がけで,その手を掴みにいくはずです.

しかし,トラブルが起こった時に,(信頼が無いために)突然手のひらを返すような行動をされてしまうと,私自身もその後のリスクをとることを躊躇(ちゅうちょ)してしまいます.

信頼には,全力で応えることができる.
でも,自分のことを全く信頼してくれていない人には,残念ながら,全力で応えることはできないかもしれません.


関連リンク(過去の記事):相手を信じることって大切