先日,プレゼンテーションのセミナーの中で「プレゼン天下一武道会」という企画を行いました.いくつかの難易度の設問を用意して,周囲を説得するための2分間のプレゼンを行うというもの(準備は30分).
最高難易度の問題として,
「現在治療法の存在しない難病の患者さんに対して,頭を切り離し,胴体を移植する手術を行う」という架空のストーリーを用意しました(実際にイタリアで今年行われるらしいです).他の設問に対して,10倍の難易度を設定しました.
今回参加したメンバーの中で,1人だけこのプレゼンに挑戦しました(私のブログにもよく登場する有名人です笑).
そのプレゼンがあまりに秀逸だったので,紹介します.
みんながPowerPointでプレゼン資料を作成している30分間に,その方は,何もしていませんでした.何もしていないように見えましたが,実はプレゼンに勝利するためのロジックを,頭の中で構築していたのです.プレゼンには,写真を3枚使っていましたが,別に何のインパクトも無い,ありきたりの写真です.
しかし,プレゼンの冒頭で,「私は皆さんの意見を,YESにするつもりはありません.ただし,積極的にNOというのでなければ,私の実行するプランを止めないでいただきたい.」という提案からプレゼンがスタートします.その後は,「この患者さんは他に助かる方法がない」「患者さんの生きるための唯一の希望を妨げないで欲しい」という説得を行いました.
架空のゲームでしたが,なんと参加者の約7割がYESに投票するという大ホームランになりました.
ここで,私が一番注目したのは,この先生が,「巧妙にルールを自分に有利な方向に変えてしまった」という事実です.おそらく,準備の30分で,このロジックを組み立てていたのだとおもいます.
「YESに票を集めるのではなく,NOで無いのなら反対しないでほしい.」というふうにゲームのルールそのものを変えてしまったのがポイントです.そして,積極的にNOを言いにくくなる情報を提示し続けたのです.