2018年2月26日月曜日

働き方改革:勤務医は時給の高いマックジョブ?

橘玲公式BLOG「働き方改革」の第二章は「解雇自由化」 
「働き方改革」で政府は、同一労働同一賃金の実施を当初案から1年遅らせて、大企業は20年度、中小企業は21年度からにする方針とのことです。(中略)それに対して、専門職に成果給を導入する「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」は予定どおり19年4月からになりそうです。ほとんど理解されていないようですが、これらの法律が厳密に適用されると「日本的雇用」は根底から覆ります。
バックオフィスは時給仕事ですから、サービス残業は「奴隷労働」以外のなにものでもありません。残業代を払ったからといって無制限に働かせていいわけではなく、労働時間の上限規制も必要でしょう。会社の都合で一方的に解雇(雇止め)にされるのは生活権の侵害で、リストラは金銭的な補償を含む厳格なルールの下に行なわれるべきです(ただし、会社が「終身」雇用を約束する義務はないでしょう)。
それに対して専門職(高プロ)は、「会社の屋号を借りた自営業者」です。この法案に「残業代ゼロ」のレッテルを貼って反対するひとたちがいますが、自営業に残業代などないのですからこれは当然のことです。その代わり成果給は青天井で、大きな利益をあげれば社長の給与を上回ることもあります(欧米では珍しくありません)。「高プロは残業に上限がなく過労死の危険がある」というひともいますが、いい歳をした大人が仕事時間くらい自分で管理できなくてどうするのでしょうか。これでは、「私はバカなのでどうか面倒みてください」といっているのと同じです。高プロの仕事は成果のみで評価し、会社が働き方に介入しないよう決めておけばいいだけです。

世間一般からみると,医師というのは,高度プロフェッショナルの代表格と考えられていると思います.しかし,(日本の)勤務医に限って言えば,私は,高い給料をもらえるバックオフィス業務としての扱いの方が実態には近いと考えています.


整形外科医のゆるいブログ:友だちを失い、ぼくはほんのすこし「大人」になった 
時給の高いマックジョブはもう卒業したい。
勤務医のことを"時給の高いマックジョブ"と呼ぶことに違和感を覚えますか?私は実情をとても上手く表現していると思いました.

勤務医に限っていえば,現状であれば,昼夜を問わず呼び出しをうけて,疲弊している心臓血管外科医の給与と,病棟を持たず救急外来の対応もしていない診療科の先生の間の給与差は2倍もありません.その差は,時間外勤務に対する報酬の差ですから,ほぼ同じという病院すらあるでしょう.

そうかといって,日本の医療にアメリカ方式(勤務医を自営業者として扱う)を持ち込むのであれば,心臓血管外科医には,(病院の収益への貢献度を反映させて)5倍から10倍の給与を支払うべきでしょう.給与を成果給にするだけではなく,稼ぎの高い診療科の医師には,業務をサポートするスタッフ(メディカルクラーク)を医師の権限で増やす(自分の報酬からクラークの給与を支払う)ことも可能にしないといけません.もちろん,収益に全く貢献していない医師は解雇される可能性もあるでしょう.

過去の記事:日米外科医の待遇の違いについて


今後の展望について,日本の社会保障制度を維持しながら,勤務医の扱いをアメリカ式の成果給(本来の高度プロフェッショナル:稼ぎのある勤務医の給与を青天井にする)に移行するという可能性は0.1%以下だと思います.そこで,見栄えのよい肩書だけ「勤務医は高度プロフェッショナル」としながら,実際の扱いは,これまでどおり,高給のマックジョブとするのであれば,今以上に勤務医の労働環境は悪化するでしょう.

心臓血管外科医の先生に,報酬は年俸制(全ての医師でほぼ横並び),時間外の給与は払わず,残業時間の上限もなく,クラークのサポートも他の医師と同じと考えれば,ブラック企業も青ざめるほどの労働環境といえるでしょう.

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