2016年12月11日日曜日

将来の医師の仕事

先日読んだちきりんの本.
自分の時間を取り戻そう


この本にインスパイアされたので,
「将来医師の仕事はどのように変わっていくのか?」
妄想してみました.

医師でなくても,"将来は人工知能やロボットが診療するようになるのかな"と考えますよね.もちろん,人工知能やロボットが,いきなり医師の仕事を奪うわけではありません.

1)診断・治療をサポートするプログラムが作られる.
例えば
(質問)70歳女性.初回の椎体骨折.骨密度は◯◯.最初に投与すべき薬剤は?
といった質問に対して,
(回答)推奨される薬剤は◯◯です.根拠は以下のとおりです.(最新のガイドラインが提示される)

医師に限らず,医療業界は参入障壁が高いのがネックになります.
ですが,このレベルの運用には,おそらく大きな規制はかかりにくいと思います.

現状であれば,自分の知識,手元にある教科書や論文,インターネット上に公開されている信頼できる情報(学会作成のHPなど)を元にして投与すべき薬剤を考えます.
ですが,医師の少ない地域で広範な疾患を診断・治療する医師にとっては,オンラインで利用できるサポートプログラムはとても便利です.

医師の診療をサポートするのが目的で,"最終判断(承認)するのは医師" という建前が成り立つので,参入しやすいのがメリット.
そのようなプログラムは,(仮にインド人が発明したとしても),最初は英語のプログラムが作られ,あとは日本語に置き換えるだけ.(利用価値の高いプログラムであれば)普及するのはあっという間.そして,どんどん提供される情報の精度が高くなります.

2)問診を行うロボットが作られる.

病院を訪問した患者さんから情報を集めるロボットが外来に設置されるようになる.
正確な問診をとろうとすると,かなり時間がかかりますよね.
時間の制約があると,聞きもらす情報も増えてしまいます.

ですが,ロボットであれば,設置台数を増やすことで対応可能.

すでに,人間の声を正確に認識することは実用レベルになっています.

さらに,自分の過去の診療録を各自がデジタルデータとして持ち運べるようになれば,その情報を読み込むことで,短時間で精度の高い問診が取得できます.
現在内服している薬剤,既往歴やアレルギー薬などの情報収集に威力を発揮しそうです.

初めて会う医師に,患者さんがすべての情報を口頭で伝えるよりも,はるかに精度が高く,たくさんの情報を短時間で電子化できるのでこれも普及しそう.


逆に,このようなロボットが普及してしまうと,
「人間が問診する」という行為が,とても効率が悪く,情報の聞き漏らしも多いと感じるようになるかも.

このあたりから,日常診療で,ロボットや人工知能のプログラムは,
”あれば便利” ではなく,”無いと診療に支障がでる” レベルになります.

3)"視診が主の診療行為" や "画像診断"をコンピューターが行うようになる.
すでに皮疹をスマホで撮影すると,一定の診断を行えるアプリも開発されています.
CT,MRI,PET,病理標本などの画像をコンピューターで解析して,診断を行うことは,実現する可能性が高そうです.この場合も,コンピューターの下した診断を,医師が承認するというステップは(形式上)必要.逆に医師が承認するというステップが担保となるので,普及も早そう.

4)医師の多くの仕事が "承認" することになる.
時間とともに,個人個人が有する知識をはるかに凌駕する知能や効率をもつシステムが普及.医師は,コンピューターが提案した内容に間違いがないことを承認することが仕事になります.
患者さんにとっては,とても大きなメリットがあります.医師の能力には個人差が大きいですが,インターネット上で更新されるプログラムは,全世界で標準化されています.つまり,日本のどこに住んでいても,標準化された診断・治療を受けることができるようになります.


いきなり1)が4)になるわけではありません.また,診療科によって,上記が普及しやすい科,しにくい科があると思います.
ですが,早いと10年くらいで普及するのではないか?とも考えてしまいます.

外科系のスキルやカテーテルを使った治療については,かなり先まで,人間が行うと思います.ですが,人工知能やロボットに押し出される形で,一部の診療科では医師が飽和状態になり,”人間の医師に残された仕事がある診療科”に医師が集まります.外科系での競争は,今以上に激しくなりそう.

5)遺伝子の情報を元にした治療
どのような疾患に罹患する可能性が高いか?
どのような薬物がそれぞれの患者さんに対して有効か?
といった解析をコンピューターでできるようになる.
この領域の解析はコンピューターの独壇場になるでしょう.

医師が20年後にしている仕事ってなんだろうね.