私たちはのっぺりとした社会空間に生きているわけではなく,人間関係には顕著な濃淡があります.ここではそれを「愛情空間」「友情空間」「貨幣空間」と呼ぶことにします.この内愛情空間と友情空間は,「政治空間」としてまとめることができます.こちらの本からの引用
学校,会社,組織といった外部から遮断された領域(伽藍)における人間関係は,政治空間の関係となりやすいです.そこでは,基本的にはネガティブ評価が基本となり,成功よりは他人に失敗を認識されないことが生存確率を高めます.ネガティブ評価が行き過ぎると,周囲から目立つことを敬遠する空気が政治空間を支配するようになり,就活でみられる,同じ髪型,同じ服装という個性を感じさせない集団になってしまいます.
こういった傾向は,政治空間という人間関係でなりたつ,外部から遮断された組織においては,多かれ少なから共通した構造になっています.
それに対して貨幣交換でなりたっている「貨幣空間」は,人間関係は無限に広がり,ポジティブ評価が原則になります.トライして,9回失敗しても1回大成功すれば良いし,それほど濃厚な人間関係にはならないので,基本的なマナーがまもれている人同士の関係であれば,人間関係のストレスはかなり少なくなります.そもそもこの空間の人間関係の定義上,ひどく付き合うのにストレスを感じる人通しは,関係をもつこともありません.
政治空間の人間関係と貨幣空間の人間関係のどちらかが一方的に優れているか?という議論は不毛ですが,少なくとも,100%サラリーマンとなり,人生全てを会社や組織に委ねて逃げ場がない状態になると,自分の人間関係はほとんどが「政治空間」に支配されるようになります.これは,学校や企業内で,人間関係をストレスとして自殺が起こる構造からしても,かなり危険な状態だとおもいます.
一方で,個人商店の店主(フリーランス)として組織の中にいるのであれば,政治空間としての人間関係から,少し距離を置くことができます.自分に合わないなら辞める,ネガティブ評価に関心をしめさないという選択肢があり,閉鎖された空間(伽藍)の外に無限に広がるバザールがあることを知っていれば,同一組織の中にとどまり続ける必要はありません(気に入った組織で,結果的に長く居たということはありえます).