2017年12月2日土曜日

学会出張が多いからその分税金を安くしてほしい

最近では,お金に関する話題が多くなったこともあり,医師仲間からお金の相談を受けることもしばしば.

先日は,
「開業医さんは,経費が使えるからいいよね.自分なんて,学会出張が全部自腹だからきついよ.税金安くならないかな」との相談がありました.

そもそもですが,勤務医(給与所得者)にも,経費は認められています.

・給与所得控除
医師に限らず,給与所得を得るためには,スーツを買ったり,必要な資格を取得したり,パソコンやテキストを購入したりする必要があります.仕事を円滑にすすめる上での接待もあるでしょう.仕事を続けるために必要な経費については,税金を免除してあげましょう.というのが趣旨です.

現在(2017/11/19)の情報ですが,年収1000万円以上の方は,一律220万円まで控除されています.勤務医は,1年間に220万円の経費が認められていることになります.
しかも,これは,領収書を提出する必要もなく,一律です.

220万円を1ヶ月あたりに計算すると約18万3000円.まあまあの金額だと思いませんか?
ただし,今後給与所得控除は,減額される可能性があるみたいですが.

さらに,「今年は,職場が変わって引っ越しに100万円かかった」とか「国際学会に4回自腹で行ったから,100万円かかった」というような,高額の出費がある場合は,特定支出控除という制度も利用可能です.

・特定支出控除
給与所得者が次の1から6(国税局HP参照)の特定支出をした場合、その年の特定支出の額の合計額が、下記の表の区分に応じそれぞれ「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度があります。
国税局HPへのリンク
詳細は,国税庁のHPを参照してもらいたいですが,通勤費(新幹線,高速利用料金,ガソリン代),転居費,研修費(学会,セミナー),資格所得費(学会の資格),単身赴任者の帰宅旅費,書籍,給与支払者の職務上関係のある者に対する接待(研修医リクルートの飲み会など)が含まれます.

特定支出控除を利用するためには,出費の正当性について,給与支払者の証明を受ける必要があります.

つまり,個人事業主と同じく,出費を証明できるもの(領収書など)を1年分集めて,エクセルなどのデータにまとめて,勤務先の病院に提出して,証明をもらえばOK.確定申告をすれば,控除してもらえます.
接待の費用については,利用した日時,場所,参加者の名前,それが病院の職務上必要な理由などを記録しておくと良いでしょう.

特定支出控除を利用できる金額は
給与に関係なく,一律
・給与所得控除額×1/2
となります.

年収1000万円を超える勤務医であれば,
220万円(給与所得控除)×1/2=110万円
つまり,110万円を超えた分が,特定支出控除として認められることになります.
(病院や科研費から出張費が支給されている場合は,カウントできません.)

給与所得控除については,何もしなくても,勝手に所得から控除されます.

冒頭の
「開業医さんは,経費が使えるからいいよね.自分なんて,学会出張が全部自腹だからきついよ.税金安くならないかな」

に対する回答としては,
「110万円を超える出費があれば,領収書をすべて集めて,それをエクセルなどにまとめて,病院に提出すれば,認めてもらえる可能性が高い」
ということになります.
「でも,控除される金額は,110万円を超えた金額だから,たとえば,130万円分の領収書を集めたとしても,130-110=20万円分ですよ.」

先日,オンラインサロンで特定支出控除について話題になった際,メンバーからの意見で一番多かったのは,
「なかなか110万円は超えないよね.」
というものでした.

でも,引っ越し留学などの大型の出費があるときは,利用価値が高そうですね!